- 社会保障・税は、何を公平と考えるか価値判断によるため、最終的には国民の選択の問題となる。そのためには、現状や選択肢などについての情報が必要。しかしながら、政府は真実を国民に伝えない。そこで、ここでは、最初に可能な限りデータに基づき、社会保障・税の問題点を分析する。田中秀明(明治大学)
- 1)年金・税等についての10の質問……まずこれを考えてみて下さい。
- 2)日本のジニ係数の変化等を確認してみましょう。ジニ係数は値が0に近ければ所得格差が小さく、1に近いと所得格差は大きいことを意味します。詳しい内容を知りたい方は、さしあたりここをご覧下さい。さて、日本はOECD諸国の中で低い方でしょうか、高い方でしょうか。資料1-2を確認して下さい。そうするとOECD諸国の中での貧困率(資料1-3)も確認したくなります。なんと問題のある国になっているのですね。消費税を導入するときのキャッチフレーズは、日本は世界で一番平等な国になったのだから、消費税入れても大丈夫、ということだったのですが、相当変化してきたようですね(資料1-4)。次に年齢階層別のジニ係数も見てみましょう(資料1-5)。若年層、高齢者層の変化をどう評価するか、ここが一つの争点にもなりそうで、当日の議論が楽しみですな。
- 3)財政支出や税の徴収を通じての再分配はどうなっているでしょうか。まず、再分配前の所得の分布の変化を見てみましょう(資料1-6)。低所得層が増えてきていることがはっきり見えますね。であれば、財政や税を通じての再分配を行うべきなのですが、OECDの中で見てみると日本はこんな状態です(資料1-7)。あまり再分配がなされておらず、特に税のそれが著しく低いことが見えてきます。低所得者への再分配を金額で見るとこんな状態です(資料1-8)。これが、税と社会保障を考えるときに理解しておくべき現状です。
- 次に社会保障の財源を考えるときに、保険料と税の二つがあります。様々な社会保障支出の内訳を見てみると、保険料、国税、地方税、雇用主負担等がばらばらになっており、社会保障の財源を整理して議論することができなくなっています(資料2-4)。また、保険料の負担率を所得階層別に見てみると、このようになっています(資料2-9)。明らかに逆進的ですね。保険料負担のこうした実態も見た上で、社会保障における保険料と税の役割をそれぞれどう見直すべきなのか、これが今回の課題です。あとは当日、田中先生と皆さんとで大いに議論して下さい(三木)。