18年07月28日朝日 朝刊 「JR北、なお苦境 国400億円支援、監督命令も」
JRは国民の足ですから、財政支援のをするのも必要。ただ、将来をどう見通しているのでしょうか。低金利政策が経営の足を引っ張っていたとは・・
旧国鉄の分割民営化から30年余り。旅客6社で最も経営が厳しいJR北海道に対し、国が400億円超の資金を投じると表明した。人口が減っていくなかで地域の足をどうするのか。ほかの地方にも、ひとごとではない。
JR北海道の2017年度の純損失は87億円。2030年度までの長期的な支援を求めたのに対し、国土交通省は27日、20年度までの2年間で400億円超の財政支援を表明した。
21年度以降も支援するかどうかは、経営改善の取り組みしだい。監督命令を出し、四半期ごとに監視していく。27日、藤井直樹鉄道局長から命令の文書を受け取ったJR北海道の島田修社長は「不退転の決意で取り組んでいく」。バスへの転換や、不動産事業の強化を進めていく。
経営不振の企業に、監督官庁が助け舟を出しつつ厳しく指導する。そんな構図を演出してみせたが、ことはそこまで単純ではない。
JR北海道の経営難は、11年の脱線事故や13年に発覚したレール検査データ改ざんも無関係ではないが、直接の引き金は低金利だ。
国は、87年の分割民営化でJR旅客6社を発足させた。その際、赤字ローカル線の多いJR北海道などのために経営安定基金を設けた。しかし、低金利を背景に、JR北海道の17年度の運用益は当初の半分。差額243億円は、純損失の2倍を超える。
JR北海道は30年度まで助けてもらえれば北海道新幹線が札幌まで延びて一息つけるというが、その主張には疑問符がつく。東京―札幌は高速化を進めても飛行機利用者の乗り換えは限られる、との見方がある。
麻生太郎財務相は27日の会見で「それ(財政支援)で黒字になる、といった簡単なこととは思えない」と述べた。
(斎藤徹)■人口減、共通の課題
JR北海道の苦境の背景には人口減少もある。それは地方共通の課題だ。JR四国の17年度の純利益は前年より9割少ない3億円。鉄道などの運輸事業の赤字は100億円を超える。
JR九州は博多駅ビルなど不動産事業に注力。16年に東証1部上場を果たし、成功モデルとされる。それでも沿線人口の減少が激しい路線では運行本数を絞っており、こうした傾向は上場で先行した本州のJRでもみられる。大都市圏の利益で地方を支えるには株主の理解が必要。赤字路線の存廃は、西日本豪雨の被災地でも取り沙汰される。
鉄道政策に詳しい東京女子大の竹内健蔵教授は「民営化は経営努力を促したが、地域別に分けたことで人口減の影響が及びやすくなった。今後は本当に必要な支援を国がしつつ市場原理とのバランスをとる必要がある」と話す。
(北見英城)