朝日新聞の経済気象台に下記の記事が。
映画「21世紀の資本」を見た。経済学者トマ・ピケティのベストセラーに依拠したドキュメンタリーだ。コロナ禍以前につくられたが、彼の主張はコロナ後の世界でより重みを持つ気がする。
彼によれば、21世紀の世界は、一握りの貴族階級が富の大半を握る18世紀的な格差社会に逆戻りしている。
過去数世紀の各国の膨大なデータから彼が導き出したのは、不動産や株式などの資本収益率の方が経済成長率を上回っているという事実だ。
相続財産に恵まれた富裕層は、政治家を抱き込み、投資による不労所得と減税の恩恵を受ける一方、余剰資金のない庶民は、いくら働いても富裕層との格差は開くばかり。二極化した世界では、相続財産に恵まれているか否かという運が人生を決める。
ピケティは資本主義が格差を増幅することに警鐘を鳴らす。不公平感を是正し、中産階級を復活させるには、相続税や累進課税など富裕層への課税を強化するとともに、タックスヘイブンで税金逃れをする多国籍企業への監視の強化が必要だと説く。
コロナ禍で人々が頼りにしたのは、結局は政府だった。その財源は税金だ。危機対応のための財政出動は、赤字国債の乱発によって将来の国の借金を膨らませる。経済のV字回復を期待しにくい状況で、いずれは借金返済の財源を政府に注入せねばなるまい。
本来政府に入るべき税金を富裕層や多国籍企業がポケットに入れてしまったことで格差は増大した。そうした状況が続けば政府が破産するリスクを、コロナ禍は高めた。コロナ後の世界では、格差の是正と政府の財政健全化を結びつける発想が不可欠だろう。(海星)