政府は26日、35兆9895億円の追加歳出を盛り込んだ2021年度補正予算案を閣議決定した。防衛費は過去最大の7738億円で、当初予算の歳出額と合わせて初めて6兆円を突破した。主要装備品の新規購入費が追加の歳出を押し上げた。主要装備品の購入は通常、毎年度の当初予算に盛り込んでおり、補正予算で本格的に計上するのは極めて異例だ。(川田篤志)
12年12月の第2次安倍政権発足後、防衛費は年々増加し、16年度に初めて当初予算で5兆円台に乗った。補正予算を含めた各年度の歳出予算額で見ると、14年度の5兆0885億円が21年度は6兆1160億円となり、7年で1兆円増えた。歴代政権が目安としてきた国内総生産(GDP)の1%を超える規模となる。
自民党は10月の衆院選公約で防衛費のGDP比2%以上への倍増検討を掲げており、衆院選勝利を機に増額傾向が加速した格好だ。
主要装備品の新規取得費は1889億円(22年度以降の支払い分928億円を除く)。財務省から高騰部品の調達が問題視されたP1哨戒機やC2輸送機、迎撃ミサイルPAC3MSEなどを購入する。いずれも22年度予算で概算要求しているが、安全保障環境の悪化などを理由に、前倒しで計上した。
装備品の購入費は従来、5カ年の中期防衛力整備計画に沿って毎年度の当初予算に計上。防衛費が大きく伸びた安倍政権下でも、補正予算を使って新規取得する例はほとんどなかった。
こうした対応が可能になったのは、岸田文雄首相が10月8日の閣議で経済対策の策定を指示した際、柱の一つに「国民の安全・安心の確保」を挙げ、安全保障も含むという考えを示したからだ。防衛省幹部は「経済発展のためには国家の平和や安全が不可欠だ」と、補正予算の正当性を強調。自民党内からは「補正予算で新規装備の購入を認めるのは画期的だ」(国防族)と評価の声も上がる。
ただ、財政法は補正予算について「特に緊要になった支出」に限ると規定している。来月召集の臨時国会では、装備品の新規取得の妥当性を巡り、論戦が交わされるとみられる。