ドイツの景気も後退気味のようですが、当面財政支出は期待できない、との分析
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****************(以下は18年5月11日)********************
ドイツの税収が予想以上に良いそうですね。財政健全化を果たした上で、この効果は立派ですね。しかも、それを中低所得者の減税に向ける、というのを見ると、泣けてきますな~。
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ドイツの事例を〔学者が斬る・視点争点〕独に学ぶ増税時の政策選択=嶋田崇治(2018.02.20 エコノミスト 48以下)から一部紹介しましょう。
島田先生は下記のように日独の違いを説明されています。
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◇低中間層の生活下支えで不安軽減
消費税率10%への引き上げは既に2度延期されている。これは人々の増税に対する強い抵抗感の表れだといえよう。前回の論稿(2018年1月16日号)では、政府への信頼と租税抵抗の緩和との関係について触れたが、財政健全化を考える上で、この点について理解を深めることは有意義だろう。以下では、ドイツの経験を踏まえ、その条件に迫ることにしたい。
◇日本との相違多数
財政収支改善のために増税が必要だといわれても、条件なしにそれを受けいれることは難しい。課税に対する抵抗は、強制的に徴収される、反対給付を前提としない、といった租税の特質に起因するものである。消費税増税の場合、逆進性が問題となり、その抵抗は一層高まる。こうした租税抵抗に直面しながらも、日本の消費税率は、一般消費税構想が提起されてから約40年かけて、ドイツの1968年時点とほぼ同水準にまで達した。今後、更なる税率引き上げが議論されれば租税抵抗は一層強まることになろう。一方、ドイツは標準税率を19%にまで引き上げている。それが実現可能であった条件とはいかなるものなのだろうか。
こうした問いへの導き糸となるのが70年代ドイツにおける増税の事例である。ドイツは、石油危機を一つの契機として財政危機に直面した。注目すべきは、不況期にもかかわらず75年に付加価値税増税を核とした財政構造改善法を成立させたことだ。当時、日本の大蔵省のリポートは、改革がドイツにおいて実行可能であった条件の一つとして、財政赤字が物価安定の見地から望ましくないという国民的なコンセンサスの存在を指摘していた。故伊東弘文氏(元九州大名誉教授)も、2度のハイパーインフレーションによるトラウマから、国民の多くが物価上昇よりも増税のほうがマシだと認識している点を指摘していた。これらは一般的に受容され得る解釈ではあるが、それを当然視してよいのだろうか。
実際の政策決定過程を追跡すると、付加価値税増税はドイツにおいても困難を極めたという事実が明らかになる。増税が困難であった主な要因は、州政府の代表が議員を務める連邦参議院のもつ拒否権にある。増税は財政健全化を進める上での核とされていたが、増税に対する人々の懸念と、世論に沿う形での州による拒否権の行使が障害となり、 増税実現には数年の時が要された。
それでは当時の連邦政府はいかにして増税を実現したのだろうか。 確かに増税を可能とするさまざまな条件(国債金利上昇、欧州各国との税率調整など)はそろっていた。しかし、決定的な条件は、増税に際して連邦が人々に必要とされる政策的措置を怠らなかったこと、そして交渉の中で増税への州の同意を引き出したことであった。
当時、不況による失業、貧困の問題が懸念される中で、政府が選択したのは給付対象を第1子まで広げた所得制限なしの普遍的な児童手当給付と所得税減税であった。児童手当は前年比322%増、連邦歳出に占める比率は74年2・3%から75年8・2%へと拡大した。 また、両政策による負担軽減効果は総所得比で3・03%に達した。この政策選択は、自分たちの必要とすることを政策に反映させることが難しい母親や児童などの貧困を論点とした「新しい社会問題」への対応だった。当時、戦後史上最大の財政赤字に苦しむ中にあって、連立政権の中心にいた社会民主党(SPD)が、こうした「新しい社会問題」へ対応したことは興味深い。これは従来の労使の対立を争点とした「古い社会問題」への対応とは異なる選択であった。
児童手当の普遍的給付は、低所得世帯に対して高い効果が期待されるだけでなく、給付対象となる児童数が最も多い中間層にとって受益感の高い政策でもあった。加えて、所得税減税も、納税義務者の最も多い中間層の負担を軽減する選択であった。連邦は、このように低中間層の生活の下支えを通じて、増税に対する懸念を払拭(ふっしょく)していった。同時に、拒否権を有する州の代表との交渉の中で、州への付加価値税配分率に関して譲歩を繰り返しながら、増税への同意を取り付けていったのだ。
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