今度は大阪市独自のルールが違法とされました。独自であっても、時価の範囲内であればよい、あるいは、国の基準よりより時価に近い評価だ、という考えもありそうですが、国の基準に則っていないという論理のようです。これにより国家賠償の時効期限内の過去20年間分を戻すことになります。根本的な問題は、「時価」を法的基準としながら、建物については再建築価格を基準として、何年たっても評価額が減少しないようにしているおかしな評価方法にあります。また、そもそも、保有を前提としている固定資産税の評価に、売ったらいくらかという市場価額を適用することの根本的矛盾があります。まあ、言い出すときりがありませんが、そろそろ見直さないと。なお、10年ほど前にある自治体の固定資産税の担当課長に「評価ミスはそうとうあるだろう?}と小さな声で聞くと「よくご存じで。おっしゃるとおりで、別の部局がある資料がちゃんと来なかったりして、ミスだらけですわ」と悲しげに答えてくれました。
********************(以下は18年1月26日)**************
その後も、固定資産税の評価ミスは毎月のように報道されてきています。かつてのように、5年分だけということはほぼなくなり、間違えてきた期間(ただし20年間)の全額を返す方向になってきました。しかも加算金付きで。
***********************(以下は、2015年7月26日)************
- 佐賀新聞「基山町、固定資産税に課税ミス 一部誤って徴収」7月3日にみられるように、固定資産税等の自治体の課税ミスは後を絶ちません。最近五年間の朝日新聞関係の報道数でも約160件。
毎年30件程度報道されています。1985年から1999年までの報道数が10件でしたから、15倍にも増えています。昔の自治体はミスがなかったのかといえば、むしろ逆で、今よりも多かったと思われます。しかし、当時は、納税者がすぐに争わなければ、争えなくなるので、間違っていてもそのままですむし、万一気がついて減額処分をする場合でも5年分だけ戻せば良かったのです。
ところが平成22年6月3日最高裁判決が、自治体を震撼させる判決を出したのです。それによると、自治体の課税処分が確定していても、それとは別に違法な処分で損害を被った納税者は国家賠償を請求できることになりました。「たとい固定資産の価格の決定及びこれに基づく固定資産税等の賦課決定に無効事由が認められない場合であっても、公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格等を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得る」と判示したのです。
そうすると、国家賠償は20年間請求できますので、課税して何も文句を言われなくても、20年間は安心できないのです。ですから、ミスが見つかったら、早めに発表するようになり、それが今日の報道数になっているのだと推測していました。ところが、調べてみると1985年からの5年間が10件、1990年からが57件、1995年からが同じく57件、2000年からが79件と徐々に増え始めてきて、平成22年(2010年)からではなく、その前の2005年あたりから156件となっていました。最高裁判決の数年前から報道が多くなっていました。
ですから、課税ミス報道が増え始めたのは最高裁判決ではなく、他の要因が大きそうです。総務省の指示があったのかもしれませんが、それは今後じっくり調べてみます。
- 今日(7月26日)も固定資産税の課税ミスが報道されています。
岡山市は23日、固定資産税と都市計画税の算定を誤り、市内に住宅用地を所有する男性から48年間以上、少なくとも計約170万円を過大に課税していたと明らかにした。市は男性にミスを謝罪、うち約120万円を返還する。
なぜ、170万円全額ではなく、120万円?という疑問が出てくるはずです。これもたぶん、国家賠償の請求可能期間の20年分なのだろうと推測できます。