中日新聞社説から
笠松競馬不祥事
再生は猛省あってこそ
中央競馬の重賞で十二勝を挙げた名馬「オグリキャップ」などが輩出した岐阜県の笠松競馬場が相次ぐ不祥事に揺れている。
発端は昨年六月、競馬法違反(馬券購入)の疑いで騎手や調教師だった四人が同県警の家宅捜索を受けたことだった。今年一月には名古屋国税局が騎手や調教師ら十人以上に総額二億円超の馬券払戻金の過少申告を指摘していたことが発覚した。
運営する県地方競馬組合(県、笠松町、岐南町で構成)は一月以降、レース開催を中止。外部識者らによる第三者委員会の調査で認定できただけでも、二〇一三~一六年に不正な馬券購入による収益は計一億四千万円に上った。
調査では、騎手らの間で馬の調子についての情報が共有され、的中情報について金銭の授受があったことが分かった。公正さを害するファンへの裏切り行為である。
組合の管理の甘さも不祥事の温床といえる。騎手はレース開催中外部との連絡を遮断され、携帯電話等持ち込み禁止の調整ルームで過ごす決まりだが、組合は手荷物検査などを徹底していなかった。
組合は四月、不正な馬券購入や所得過少申告などで、騎手と調教師計三十人に「競馬関与禁止」などの処分をし、監督責任を問い組合関係者ら二十一人も処分した。
だが、その後も組合が開いた税の研修を機に、調教師ら八十一人の所得申告漏れが明らかになり、全員が訓告などの処分を受けた。馬券購入とは無関係ながら、関係者と組合は緩み切っていたというほかあるまい。
再発防止のため、組合は警察などの外部講師を招いた研修を年一回から四回に増やすほか、法令順守の訓示会を年二十回以上開催するという。
組合は先月九日、再開に向けた公営競技の指定申請を国に提出。古田肇知事は会見で「八月末の再開を期待したい」と述べた。
笠松競馬はバブル崩壊後の〇五年に赤字転落の危機に陥り、県議会に廃止検討案も上程された。騎手や調教師の手当カットや賞金削減のほか、ファンの募金などで苦境を乗り越えてきた歴史もある。
研修会に参加した調教師の一人は「当たり前のことができていなかった。ファンの方には申し訳ない」と述べた。オグリの名声に恥じぬ地方競馬場としての再生は、猛省があってこそであろう。