農民意見書:「税、払いません」 農民、松代藩へ抵抗の文書 小川村郷土歴史館で展示 /長野
2019.09.24 毎日新聞
お酒とお茶は一切飲みませんから--。10月から消費税率が10%に引き上げられるのを前に、小川村郷土歴史館(同村高府)で、江戸時代の農民が、お茶や酒にも年貢を課した松代藩に対して「お茶もお酒も飲まない代わりに税を払わない」などと記した文書「当村小百姓万事願書之事」のコピーを展示している。10月20日まで。【坂根真理】
先祖代々、この文書を自宅で大切に保管してきたという前同村長の伊藤博文さん(71)は、「今の日本で例えたらさ、『私は介護サービスを受けないから、介護保険料は払いません』ってことが書いてあるんだよ。おもしれえよな」と笑う。
「当村小百姓万事願書之事」と題した文書は1734年に書かれたもの。松代藩4代藩主の真田信弘が、少しでも年貢を増やそうと酒やお茶に課税しようとしていたことが文書からうかがい知れる。
伊藤さんによると、当時は酒やお茶を扱う行商人が村を訪れて、その場で販売する仕組みがあったという。とっくりなどを持参して購入したそうだ。
文書には「酒とお茶は一切飲まない」という記述の他にも、「酒を飲むときは(葬式など)人の生き死にの時にする」「お代官様やお奉行様が村に来るときは酒を用意する」「お酒を売りに来た人を見つけたら300文を取ることにする」など、具体的な取り組みも書かれている。
伊藤さんは「貧しいから、知恵を絞らないと食っていけないわけ。お百姓の知恵を絞った節税対策が面白い。消費税の増税を機に、昔の人に思いをはせてもらえたら」と話し、館長の福島誠さんは「お酒やお茶を飲むのは庶民にとって、楽しみの一つだったはず。それを我慢して、節税しようと取り決めた文書を藩に届けたなんて、すごい」と語った。
入場無料。火曜休館。問い合わせは同館(026・269・2270)。