週刊朝日の以下の記事は、実に明確に今回の事件の真犯人を挙げ、関係者がそれを口にしていることを示しています。何だ、みんな知っているんじゃないですか。
2018年04月06日 週刊 週刊朝日
佐川前国税庁長官の次はあなただ… まだある“安倍昭恵首相夫人案件”
森友学園を巡る一連の問題の“主犯”として国会に差し出され、証人喚問される佐川宣寿前国税庁長官。だが、“真犯人”が誰なのかは、国民の目にも明らかで、茶番劇に過ぎない。そして霞が関で「首相夫人案件」と呼ばれる案件は森友だけではない。徹底検証した。
ある自民党幹部によれば、安倍晋三首相夫人の昭恵氏は最近、自宅にはあまり帰宅せず、ホテルを転々とし、講演や、芸能人らが参加するセレブパーティーに参加するなど相変わらずの生活を送っているという。
「国会で野党に昭恵さんの名前を連呼されることが、安倍さんにはボディーブローのように効いている。最近は体調を崩し、ホテルのスパに籠もり、点滴を受けるなど元気がない。昭恵さんはもう唯我独尊で、誰にも止められないようだ。これ以上、非難されないよう党としては行動を自粛してほしいが、『何とかして』と安倍さんに言える人は誰もいない。アンタッチャブルな存在なんですよ」
安倍首相の「ゴッドマザー」で昭恵氏の姑、洋子氏もお騒がせな嫁に、とっくに匙を投げているという。
「昭恵さんの近況を聞かれると、洋子さんは『ノーコメント』と話題にしたがらない。首相も困っているようで、家では洋子さんに愚痴を言っているようだ」(安倍家の知人)
昭恵氏が、開校予定だった森友学園の小学校の名誉校長に就任したことがきっかけで、霞が関を巻き込んだ大スキャンダルとなったが、その肩書はこれまでに判明しただけで20以上もある(左ページ表)。
その中で本誌が注目したのは、森友学園のように破格の条件で国有地が払い下げられた社会福祉法人「福田会」だ。
同会は児童養護施設や障がい者施設の運営で長い歴史があり、会報によると、東京の一等地、渋谷区広尾に2500坪の敷地を持つ。
うち約1500坪は今も財務省から無償で借り、残りの千坪は有償の借地だったが、300坪を財務省に返還することを条件に700坪は事実上、無償で譲渡されていた。昭恵氏は福田会後援会会長も務めている。ジャーナリストの山岡俊介氏が語る。
「奇妙なのは、福田会はかつて国有地払い下げをめぐって3億円の詐欺事件を起こし、元理事長が逮捕されたこともある。国有地を狙い、不動産ブローカーらが暗躍。安倍洋子氏を知る大物フィクサーの関与も取り沙汰され、騒ぎになった」
福田会の国有地を巡る詐欺事件は2003年1月、一斉にメディアに報じられた。当時の報道によると、警視庁捜査2課に逮捕された元理事長は都内の財団法人を相手に、「福田会の賃借している国有地の払い下げ話がある」「大蔵省(当時)関東財務局とは話がついている」などと言って、新たな医療・福祉施設の共同経営を持ち掛け、3億円を騙し取ったというものだった。
福田会の登記簿を確認すると、事件前は約3千万円近くあった法人の資産は事件当時0で1億円近い債務超過に陥っていた。
「福田会の理事長、理事は名誉職のようなもので実務にはほとんどタッチせず、非常勤です。逮捕された元理事長の本業も不動産会社の経営者でした。財務省へ払う地代などで負債が膨れあがった福田会は、別の不動産ディベロッパーに対し、『国有地が払い下げられる』とウソをつき、3億円の資金提供を財団法人を経由し受けたが、途中でウソが発覚。その間にディベロッパー側が福田会の理事長を別の人物にすげ替えようとし、民事訴訟にも発展しました」(当時を知る関係者)
逮捕後に元理事長側が被害弁済したので、処分保留となり、事件はウヤムヤになったが、雲散した“新規事業参入”は8年後、実現することになる。
前述したように700坪の国有地が福田会へ11年7月払い下げられ、12年には都市型老人ホーム、認知症グループホームを開設した。
「福田会にとってあまりにもおいしい話です。譲渡された700坪の土地で新規事業となる高齢者の福祉施設を開設し、法人の資産は13億円にまで膨らんでいる。そればかりか、13年以降は既存の児童養護施設や障がい者施設の建物まで老朽化を理由に次々と建て替えられ、昭恵氏はその竣工式にも出席した」(前出の山岡氏)
昭恵氏が後援会会長に就任したのは、福田会のホームページによれば13年1月で、国有地が財務省から譲渡された後だ。現理事長の太田孝昭氏に「後援会を発足するので発起人になってほしい」と要請されたことがきっかけだったという。
太田理事長はかつて東京国税局査察部に所属。退職後、千代田区に税理士事務所を開設し、今では多くの税理士を抱え、コンサルティング業務など幅広く手がけている人物だ。
だが、昭恵氏が福田会に関わりを持ったのは、第1次安倍内閣が発足した06年だという。この時、初めて児童養護施設を訪れて以来、福田会の会報の「寄付者一覧」などにたびたび名前が登場している。詐欺事件以降、福田会理事長に就任した元衆院議員の高見裕一氏はこう証言する。
「私は09年に病気のために辞任したのですが、高齢者施設ができていたことはいま初めて知りました。昭恵さんが訪問されるようになったのは、当時の施設長と友人関係にあったからだと思います。私も2度ほどお目にかかっています」
昭恵氏はポーランド大統領夫人、トルコ首相夫人らを福田会に案内するなど夫人外交も展開していた。さらに福田会のホームページには、昭恵氏が名誉会長を務め、森友学園との関係で話題となった一般社団法人・鈴蘭会(福岡市)のリンクも貼ってある(写真略)。福田会は鈴蘭会が主催する漢文などを音読する「素読会」のため、隔月に1度のペースでホールを提供していた(昭恵氏は3月19日までに鈴蘭会名誉会長を退任)。
弁護士でもある福島瑞穂参院議員はこう指摘する。
「福田会に国有地が譲渡された経緯も不可思議と言わざるを得ません。昭恵さんは総理夫人の立場で法人などに関与することに無頓着すぎます」
福田会に経緯を聞くため、取材を申し込むと、「上からの指示で取材は一切お答えできません」と拒否。
太田理事長が代表を務める税理士事務所を通じ、取材を申し込んだが、回答はなかった。財務省にも問い合わせたが「理財局の担当者が国会対応に追われていて、期限までに回答できない」。安倍事務所にも事実関係を確認するため質問書を送ったが、期日までに回答はなかった。
最大の問題は森友などの疑惑に対し、昭恵氏を含む当事者がきちんと説明しないことではないか。■佐川宣寿氏が絶対に明かさない、今井首相秘書官の秘密
安倍政権の存亡がかかった攻防が国会で3月27日、繰り広げられる。衆参両院で行われる佐川宣寿・前財務省理財局長の証人喚問だ。
自民党幹部は、こんな現状を語る。
「格安での国有地払い下げ、文書改ざんなど一連の森友案件の“主犯”は安倍さんの懐刀の今井尚哉首相秘書官だろう。彼が理財局の迫田英典氏(売却交渉時の局長)、後を引き継いだ佐川氏と相談し、“実行”させた。昭恵夫人が絡む森友案件の首相答弁は今井氏が財務省と調整し、練り上げていた。もし、佐川氏が今井氏の名前を出したら、安倍政権はもたなくなる。安倍さんは必死で今井氏を庇っており、代わりに杉田和博官房副長官に責任をとらせるのではないか、という声も出ているほど。首相周辺からは『今井氏を重用しすぎた、ヘタな小細工で墓穴を掘った』という声がしきりだ」
前川喜平・前文科事務次官も本誌先週号で、「官邸にいる誰かから『やれ』と言われたのだろう。私は、その“誰か”が首相秘書官の今井氏ではないかとにらんでいる」と名指ししていた。だが、自民党国対関係者はこう言う。
「官邸は佐川氏は重要なことは絶対しゃべらないと信じている。佐川氏と今井首相秘書官は東大同期の仲だ。今井秘書官と佐川氏は首相答弁と決裁文書の整合性を持たせるため、必死で書き換えを現場に指示していたようだ。佐川氏は絶対に今井氏や古巣の財務省を裏切らないだろう。彼はまだ60歳で人生も長い。組織を守り通せば、それなりの見返りは得られる。万一、今井氏の名前が出たら、まず、菅(義偉官房長官)さんはアウトだろうね」
官邸は佐川氏を「最終責任者」にしてトカゲのしっぽ切りを断行するかに見えるが、実態は違う。近畿財務局の関係者がこう語る。
「森友学園の事案は『総理案件』と呼ばれていて、幹部の中には籠池(泰典)氏のことを『籠池先生』と呼ぶ人もいたそうだ。籠池氏と担当者の面会の日程など逐一、本省に知らせていた。決裁文書からの削除箇所はマーカーで線を引き、本省が指示。改ざんを拒否した職員もいたが、組織防衛だと押し切られた」
佐川喚問で質問に立つ自由党の森ゆうこ参院議員は言う。
「約1年前、小学校建設現場を視察した後、数人の近畿財務局職員がワゴン車で送ってくれました。その時に車内で『一番弱い立場の現場にしわ寄せがくる。記録は早く出したほうがいい』と忠告しましたが、残念なことに犠牲者が出てしまった」
今や無職の佐川氏は、どんな心境なのか。
東京都内の佐川氏の自宅は住宅街の瀟洒な一軒家。庭に植えられた桜の花は七分咲きで、門にはきれいに手入れされた四つの植木鉢が、花を咲かせていた。近所の人はこう言う。
「以前は公用車がお迎えに来ることもありましたね。旦那さんは見かけませんが、奥さんはたまにゴミ出しをしているのを見かけることがあります。お嬢さんがいるようです」
犬と一緒に自宅から出てきた若い女性に聞くと、「何もお答えできないんです」と足早に去っていった。
勾留中の籠池氏と面会した希望の党の今井雅人衆院議員がこう明かした。
「疑惑が発覚した当時、理財局国有財産企画課課長補佐が籠池氏に『10日間ほど雲隠れをしてほしい』と森友学園の顧問弁護士(当時)を通して依頼し、ホテルに彼が隠れた件なども本人から改めて確認しました」
森議員の調査によれば、国有地売却に当初、別の学校法人が手を挙げた際にはゴミの撤去費用は約8400万円とされたが、森友学園に売却された際には約8億2千万円と、実に10倍の費用が算出された。会計検査院にも指摘されたこの謎もいまだに解明されていない。
佐川喚問を乗り切っても安倍政権には打開策がない状況が続く。佐川氏の証人喚問前にすでに30%を切りそうなほどに急落していた内閣支持率は、そう簡単に戻りそうもない。政府関係者がこう語る。
「25日の党大会で高らかに憲法改正を謳うはずだった総裁演説も、抑制された文案に差し替わった。改正自体がもう無理という声もある。佐川喚問も当初、もっと早く予定されていましたが、官邸が党大会後にしてほしいと党に泣きつき、27日になった。官邸は複数の政権運営案を徹夜で作っているが、徒労となっている」
秋に総裁選を控える自民党内では票読みが本格化している。特に注目されるのは石破茂氏の動向だ。竹下亘総務会長をトップに据えた竹下派(旧額賀派)が、石破氏を支持する動きを見せているという。
「二階派は表向き、安倍3選を支持しているが、竹下派が石破氏を担ぐと合流する可能性が高い。二階(俊博)さんは旧田中派出身で同志だからね」(自民党議員)
一方、安倍首相を擁する細田派関係者はこう話す。
「安倍さんは石破さんとの一騎打ちに勝ち、3選するつもり。総裁派閥の細田派(94人)と麻生派(59人)、岸田派(47人)で票を固めれば、勝てる」
旧宏池会系の総裁候補とされる岸田文雄政調会長は“ハムレット状態”で身動きが取れないという。
「岸田さんは出られる状況じゃない。実は同門の麻生(太郎副総理)さんは大の岸田嫌い。昔、大宏池会を一緒に作ろうと持ちかけたが、煮え切らない岸田さんが期限までに返事せず、麻生さんは激怒。今も許していない。そんな状況で岸田さんが出馬しても勝てないし、裏切ったら細田派も許さない。安倍内閣をいずれ岸田さんに禅譲してもいいと秋波を送っているので、将来のために安倍さんと組むしか道はない」(前出の細田派関係者)
だが、党内は安倍3選を阻止する最強の伏兵がいつ、決起するかと固唾をのんで見守っているという。
「小泉純一郎、進次郎親子が石破氏を支持したら、一気に政局の流れが変わる。小派閥、無所属も雪崩を打つだろう。進次郎さんは12年の総裁選で石破さんに投票したので、二階さんはその流れを読んで最近、安倍さんと距離を置き始めたのではないか」(同)
(本誌・亀井洋志、小泉耕平、上田耕司、大塚淳史、森下香枝/村上新太郎)