そう、箱物は一見あでやか。でもその後に来るのは常に財政問題。自治体も大学なども同じです。朝日の記事
横浜市の林文子市長(75)の3期目は、大規模な公共施設やインフラが次々に完成を見た。
【特集】横浜市長選
それは市の普通建設事業費の推移にも現れる。2期目途中の2014年度までは1千億円台後半だったが、15年度から2千億円台に乗り、18、19年度はいずれも2352億円だった。
人口が100万人を超える政令指定市11市のなかで比べると、横浜市の特徴は際立つ。
19年度の住民1人当たりの普通建設事業費は、2番目の6万2653円。だが新規整備に充てた額で比べると、断トツ1位の3万1350円。更新整備は1万3472円で、最下位だった。
新たな公共施設などへの投資を積極的に進める一方、既存の建て替えや改修はそれほどでもない。新規と更新の線引きに自治体間で違いがある可能性はあるが、そんな姿が浮かぶ。
今後も横浜市は巨大プロジェクトが目白押しだ。
市が誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)は民間事業者による開発・運営だが、建設予定地の山下ふ頭周辺は、道路整備などの公費負担が見込まれる。
同じ横浜港に面したみなとみらい21地区では、バレエやオペラ中心の劇場新設が検討され、用地費を除く建設費などは約480億円と試算されている。
郊外部の米軍上瀬谷通信施設跡地では、27年の国際園芸博覧会の会場建設費に約320億円、新交通システム整備に約700億円、土地区画整理事業に約600億円が見込まれ、一部は市費が投じられる。
悪化する財政、老朽施設の維持にもコスト
指定市11市のうち7市は更新整備の割合が5割を超え、老朽化した公共施設などへの対応を重視する姿勢がうかがえる。
横浜市も戦後の人口急増に合わせ、郊外住宅地を中心に学校や市営住宅、道路や公園、上下水道などが一斉に造られた。これらの建て替えや改修などが今後の重要課題である事情は、他都市と変わらない。
市によると、市立小中学校の8割近い384校は築40年以上。道路橋は約5割の862カ所、水道管は3割近い2704キロが完成から40年を超える。市は今後約20年間で、公共施設などの保全・更新に4兆9800億円かかると推計する。
市の財政規模に対する借金残高などの割合を示す将来負担比率は19年度に140・4%と、京都市、広島市に次いで3番目に悪い。20、21年度には、将来の借金返済のために積み立てている「減債基金」を200億円ずつ取り崩し、臨時財源として計上した。さらに、コロナ禍による市税減収を補うために赤字地方債を発行し、21年度は500億円に上る。
「次の市長選で誰が勝ったとしても、財政再建を真剣に考えなければならないだろう」と市幹部は言う。IRなどの巨大プロジェクトに注目が集まりがちだが、「将来への備え」の議論が欠かせない。(武井宏之)