2018年08月10日 週刊 週刊朝日に「家計の投信、33兆円過大 日銀のミスで得したのは?」という記事があります。あれあれ。
「貯蓄から投資へ」
このスローガンのもと、政府は投資信託や株式などを積極的に買うよう促してきた。アベノミクスによる株高や税制優遇もあり、家計の投資信託の保有額は増えていたはずだった。
しかし、それが“うそ”だったことがはっきりした。中央銀行として様々な経済統計をまとめている日本銀行が、家計の投資信託の保有額を33兆円も過大計上していたのだ。
ミスがわかったのは、家計や企業などの資金や資産の状況をまとめた「資金循環統計」。日銀が3カ月に1度公表していて、政策議論にも用いられる重要な統計だ。年1回調査方法を見直していて、6月下旬の改定作業で問題が発覚した。日銀は詳しい説明を拒んでいるが、ゆうちょ銀行の投信の保有額を過小評価していたことが主な原因のようだ。個人が投信を買い増しているはずだったのに、実はゆうちょ銀行が買っていたことになる。
日銀は過去にさかのぼって数字を修正。2017年12月時点でみると家計の投信の保有額は、109兆円から76兆円に減った。11年以降おおむね右肩上がりだったとみられていたものが、実は15年6月をピークに伸び悩んでいたのだ。
日銀は「統計の精度を高めたものでミスという認識ではない」(広報課)と釈明するが、長年誤った数字をもとに政策議論が行われてきた。金融業界からは、「日銀の統計への信頼性が揺らぎかねない」(大手証券アナリスト)と戸惑いが広がる。経済アナリストの森永卓郎さんはこう言う。
「家計の投信の保有額が増えているという統計結果には、ずっと違和感を持っていた。こんなミスが起きるのは日銀が劣化していると言わざるを得ない」
森永さんは国内で販売されている投信は手数料や信託報酬が高く、個人投資家にはすすめにくいという。
「投信を買っても、高い手数料などで損をしている人は多い。個人が投信離れをしていることがわかったのを機会に、金融業界は襟を正してほしい」
結局、誤った統計結果で得をしていたのは、「貯蓄から投資へ」の政策目標を掲げていた政府のようだ。
「政府はアベノミクスの一環として、日銀に株を買わせて株価をつり上げ、個人も投資に向かっているとアピールしてきた。実態は『官製相場』で、個人が幅広く参加する健全な金融市場になっていなかった」(別の大手証券アナリスト)
政府や日銀の統計を、そのまま信じてはいけない。
(本誌・大塚淳史、太田サトル、多田敏男/今西憲之、岸本貞司)