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茨城県は県職員の給与計算をするシステムを、2023年度中に自前のシステム運用から埼玉県との共同利用に切り替える。茨城県によると、都道府県単位で給与システムを共同利用するのは全国初となる見通し。茨城県は、初期費用と10年分の運用経費合わせて約6億円の節約を見込む。システム著作権の一部を持つ埼玉県には利用料収入が入り、一挙両得な“良縁”と言えそうだ。
茨城県職員は教職員、県警職員を合わせ約3万7000人。給与計算には1999年に自前で構築したシステムを使ってきた。ただ、県人事委員会勧告や法改正に伴い、年2回ほど改修が繰り返され、プログラムが複雑化。2025年までに新たなシステムが必要になっていた。
17年に就任した大井川和彦知事は財政改善の一環で、費用がかさむ独自システムを手放し、他県との共同利用を推進する方針を掲げた。“パートナー”を求め19年、46都道府県に意向を調査。20年から新システムを導入予定だった埼玉県が名乗りを上げた。茨城県の現行システムと機能が似ており、適合性を1年間かけ確認した上で21年4月、契約にこぎ着けた。
茨城県によると、自前の新システムを構築しなくなったことで、埼玉県に払う利用料などを差し引いても、初期費用分が約3億円節約できる。
埼玉県のシステム保守管理は「高知電子計算センター」(高知市)の宇都宮事業所からシステムエンジニア(SE)が遠隔で行い、共同利用が始まれば運用経費は2県で折半。茨城県からすれば、庁内に置いていたサーバーやSE常駐が不要となるなど、23年度からの10年で約3億円の運用経費が削れる見通しだ。
19年に意向調査をしたこともあり、茨城県にはシステム更新を控えた他県から、共同利用の進展に関する問い合わせがあるという。共同利用に加わる県が増えれば増えるほど運用費は3分の1、4分の1と減っていくため、茨城県はさらなる“縁談”に期待している。
一般財団法人「全国地域情報化推進協会」(東京)によると、市町村レベルでは給与処理に限らず、さまざまな業務でパッケージサービスを利用するケースが目立つ。一方で、都道府県は規模が大きく、条例の内容や地域特性が異なることから、独自システムを持つことが多いという。
同協会の武藤俊一企画部担当部長は「今後、職員規模やシステムの仕組みが近い都道府県同士でマッチングできれば、共同利用が広がる可能性はある」と話している。