北海道内の保険料格差が示されました。日本全体だともっと大変でしょうね。保険料は不公平な制度に陥っています。
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国民健康保険半世紀ぶり大改革 運営は市町村から都道府県へ 脆弱な財政構造は変わらず(三原岳・エコノミスト 2018.05.29 第96巻 第21号 通巻4552号 82~84頁 )が今回の改正の概要を伝えています。
会社を退職した高齢者らが加入する国民健康保険(国保)の財政運営主体が今年4月、市町村単位から都道府県単位に変わった。これは国民全員を公的医療保険でカバーする「国民皆保険」が1961年度に導入されて以来、約50年ぶりの大改革だ。保険料の設定や赤字処理の方法などが大幅に変わり、税金や保険料など国民の負担に影響しかねない内容を含んでいる。
まずは手元にある健康保険証を見てほしい。会社の名前が入った組合の保険証を持っている人は健康保険組合、「全国健康保険協会」という保険証の人は協会けんぽ、公務員が加入する共済組合、市町村の名前を確認できた人は国保、都道府県名の広域連合と書いた保険証を持っている人は75歳以上の後期高齢者医療制度にそれぞれ加入していることを意味している。それぞれの保険で病気やケガになるリスクをシェアし合っている。
日本の公的医療保険制度は年齢・職業で細分化されており、健康保険組合と協会けんぽ、共済を「被用者保険」と一般的に総称する。そして被用者保険に入っている人も原則として退職後は国保に、75歳以上になれば後期高齢者医療制度に移る(図1)。定年以後も企業に所属しない限り、大半の人は国保に加入することになる。ただ被用者保険の保険料を財源とした交付金のほか、給付費の半分には税金が投入されている。加入者でなくとも国民生活と密接に絡んでいる。◇1938年に原型
国保の原型が発足したのは1938年だ。工場労働者を想定した被用者保険の枠組みが27年にスタートしていたが、農林水産業従事者や自営業者、零細企業の従業員は公的医療保険の恩恵を受けられなかった。さらに30年に始まった昭和恐慌で農村が打撃を受けたため、主に農民を支援する目的で国保が創設された。これが図1のように分立した体制の淵源だ。定期的に給与を得られる被用者保険の労働者に比べると、農民や自営業者など保険が成立しにくい不利な条件の人で構成する脆弱(ぜいじゃく)な国保の財政構造が作り出された。
さらに61年度に国民皆保険を実施する際、全ての国民がいったん国保に入った後、被用者保険の加入者は国保から離脱する仕組みを採用したため、基本的な構造に変化は見られなかった。
4月の国保の制度改正では何が変わったのか。一つは運営が市町村単位から都道府県に移った点だ。ただ保険料の徴収など住民に身近な事務は引き続き市町村が担う。また保険料が一気に上がらないように国の補助など経過措置が導入されるため、保険料を支払う場面など住民の生活に大きな影響が出るわけではない。
最大の変更点は財政運営のルールだ。具体的には赤字の穴埋め方法である。
後述する通り、国保の財政基盤は脆弱であり赤字が発生しやすく、制度改革前の赤字は毎年3000億~4000億円程度に及んでいる。多くの市町村は財政赤字を穴埋めすべく、保険料を引き上げる代わりに市町村の税金を追加投入している。これは一般的に「法定外繰り入れ」と呼ばれており、国保の財政運営では問題視されてきた。
その最大の問題は、負担と給付の関係を不明確にする点である。例えば赤字の対応策として、A市は保険料を引き上げる一方、B市は保険料を引き上げずに法定外繰り入れを実施すると、何が起きるだろうか。
A市では国保の加入者である住民の理解を得つつ赤字を穴埋めしたのに対し、B市では同市に住む国保の加入者だけでなく、被用者保険に加入する住民にも税負担を求めていることになる。しかもB市のような多くのケースでは、法定外繰り入れに関する市町村の説明は十分とは言えず、住民は不透明な税負担を強いられていた。◇計画的な赤字処理促す
しかし制度改革後の赤字補填(ほてん)の仕組みは大幅に変わった。それは主に三つだ。
第一に都道府県化に際し、国から総額3400億円の財源を追加的に投入した。この結果、国保の財政基盤は強化され、赤字が発生しにくい状況となった。
第二に法定外繰り入れを制限するため、「財政安定化基金」という制度を都道府県単位に設置した。これにより赤字が出た場合でも必要額を基金から確保できるようになり、赤字を計画的に処理できるようになった。
第三に都道府県は年齢構成や所得などに応じて市町村ごとの理論的な保険料(標準保険料)を設定し、市町村は標準保険料を参考にしつつ実際の保険料を設定する。その上で住民から集めた保険料を「納付金」という形で都道府県に支払うことになった。理論的な保険料と実際の保険料が異なる場合、市町村は保険料の妥当性について住民に説明する責任を負う。
こうした改革によって、国保を巡る負担と給付の関係が明確になり、国保に加入する住民は「保険料の負担は妥当か」「保険料の負担に見合う医療サービスを受けられているか」といった点を判断しやすくなった。言い換えると、都道府県と市町村は住民に対し、保険料水準の理由などを丁寧に説明することが求められている。
都道府県はどのようなスタンスで50年ぶりの大改革に臨んだのだろうか。各都道府県が制度運営の考え方などを記載した「運営方針」を通じ、計画的な赤字処理に向けた姿勢が見えてくる。
厚生労働省は5年以内の計画策定を通じた段階的な赤字の削減・解消を求めている。例えば奈良県は運営方針で「制度改革以前の赤字を24年度までに計画的に処理」「18年度以降の赤字は原則として発生年次の翌年度に解消」と具体的な目標を定めた。だが、このような積極的な赤字処理のメドを明記したのは18都道府県にとどまっている。
今後は計画的な赤字処理に向けた方策を含めて、都道府県と市町村が連携しつつ安定した財政運営を図る必要がある。
しかし、都道府県化を経ても、条件が不利な人で構成する国保の脆弱な財政構造に変わりはない。財政運営は今後も難しいかじ取りを迫られる。
背景にあるのは、国民皆保険実施から半世紀の時を経て、国保加入者の構成が大きく変わった点だ。国保加入者の職業構成割合を見ると、63年時点では農林水産業従事者が44・1%、自営業者は26・2%だったが、16年は農林水産業2・3%、自営業15%に低下したのに対し、無職は63年の12・2%から43・9%、被用者は12・4%から34%に増えている(83ページ図2)。08年度に無職の比率が大幅に減っているのは、75歳以上の無職の人が後期高齢者に移行した影響だ。◇高齢者と非正規の受け皿に
ここで言う「無職」はどんな人たちだろうか。国民がどこの医療保険に加入しているかを5歳ごとの年齢層別に見ると、60歳を超えると国保が増える一方、健保組合と協会けんぽは減っている様子が分かる(図3)。つまり国保は退職後に被用者保険を脱退した高齢者の受け皿になっているのである。
さらに高齢者は若者よりも多く医療費を使う傾向があり、国保は人口の高齢化に伴う医療費増加の影響を受けやすい構造となっている。
一方「被用者」は被用者保険に加入できない非正規雇用者である。実際、5歳ごとの年齢階層別の職業構成比を見ると、いわゆる20歳から64歳代の現役世代では被用者がトップを占めている(図4)。総じて見ると、非正規雇用者は正規雇用の人よりも所得が低く不安定であり、条件が不利である。
こうして見ると、現在の国保は条件が不利な加入者で構成されていることが分かる。これが国保の赤字を生む原因となっている。都道府県を運営主体にしたのは国保財政の安定化を図るうえでの方策だったと言っていいだろう。
ただ、都道府県化を経て財政運営の単位を大きくしても、国保の脆弱な財政構造は変わっておらず、一層の高齢化の進展と医療費増加で財政悪化に見舞われるリスクに引き続き直面している。
しかし、国保の本質は病気やケガのリスクを住民同士で支え合うことにあり、これは都道府県化を経ても変わらない。
今後、増加する医療費を住民同士でどう分かち合うのか。もし保険料や税金で追加負担が必要になった時、どう住民に説明するのか。これらの点について、財政運営の責任を持った都道府県、そして住民に保険料の妥当性を説明しなければならない市町村の責任は大きい。
(三原岳・ニッセイ基礎研究所准主任研究員)
**********************(以下は3月10日)****************
税制改正を受けて、各自治体では引き上げの諮問をして、その答申を受けて改正する、という手続きをとるようです。宮古の例です。
その後、昨年末の税制改正で、以下のように引き上げが決まりました。
〈国民健康保険税〉
(14)国民健康保険税の基礎課税額に係る課税限度額を 58 万円(現行:54 万円)
に引き上げる。
(15)国民健康保険税の減額の対象となる所得の基準について、次のとおりとす
る。
① 5割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者の数に
乗ずべき金額を 27.5 万円(現行:27 万円)に引き上げる。
② 2割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者の数に
乗ずべき金額を 50 万円(現行:49 万円)に引き上げる。
(16)国民健康保険法施行令の改正に伴い、所要の措置を講ずる。
***************(以下は17年8月28日)********************
国民健康保険の運営が来年、都道府県の方に移管されることになっていますが、そのことにより、国保料(税)が値上がりする予想している市町村が35%もある、という報道。実際にはどうなるのでしょうね。