平成30年2月23日衆議院予算委員会第四分科会では、中川元大臣と林現大臣の対決。大学の無償化に関係してきます。
○中川分科員 その抽象的な話でとどまるんじゃなくて、具体的なシステム設計なんですけれども、これは大きく分けて、授業料を減免していく、あるいは、ちょうど義務教育でそれが実現されているように、幼児教育から大学まで授業料を無償化をしていく、この設計が一つあると思うんですね。
それから、もう一つは奨学金ですね。この奨学金、今言われているのは、貸与型から給付型にどれだけ持っていけるかという側面で議論されています。最近の新聞でも取り上げられていますけれども、貸与型で借金を抱えて、そのまま卒業して、その借金が返せない状況がある。これは、ちょうどアメリカの大統領選挙のときも、サンダースがそれを争点にして争ったテーマでありますが、その二つがあると思うんです。
これはどういうふうに最終的に持っていこうとしているのか。ここのところのいわゆる落ちつきどころといいますか、最終の完成形というのは、日本のこの無償化の議論の基本になるところだと思うんですよ。
今のところは、どっちも、所得に応じてとりあえずここまでやっていこうじゃないかとやり始めるんですが、これはどこまで行ったら最終形になるのか、あるいは所得ということで切って両方いいのかどうか、そんなことが議論されないままに、なし崩し的に政策が今進み始めているんです。
それはなぜかといったら、これは文科省の中でしっかり議論していないんですよ。どっちかというと、新しい経済政策パッケージで、官邸の方で経済分野からこの議論が入って、人材育成で、すとんとこっちを向いておりてきたから、それじゃ、とりあえず予算がつくからやりましょうというので両方引っ張り上げている、これが現状じゃないかというふうに私は推測するんですが。
大臣、ここについての問題意識、もっと詳しく事前に言っておいたらよかったんですがそういう意図だったんです、恐らく聞き取りに来た人たちはそれをわからないんだろうと思うんですが、それをどのように整理をされていこうとしているかということを議論したいんです。○林国務大臣 よく質問の御趣旨がわかったような気がいたします。
まず、三歳から五歳児の幼児教育のところ、これはもう無償化をしようとはっきり言っておるわけでございます。これに対して、高等教育の方は負担の軽減ということで、完全な無償化ということではないということが一つ大きな整理ではないかというふうに思っておりまして、消費税の財源を活用してということから議論がスタートしたところもあって、まずはその幼児教育の無償化と、真に必要な子供たちへの高等教育の無償化、これが二本柱になりました。
そういう意味では、私も実は人生百年時代構想会議の副議長ということでございますので、大きな枠組みは既に今委員がおっしゃったように閣議決定されておりますが、これからこれを、では具体的にどう設計していくかというのは、特に幼児教育の場合は、御案内のように保育園と幼稚園と両方ありますので、両省と内閣府と一緒にということになりますが、高等教育の方については我々の方で検討する場を設けて設計をしていこう、こういうふうになっておりますので、主体的に我々がしっかりとやるということになると思っております。
理念的にはやはり、今の段階では、幼児教育は無償化、高等教育は必要なところを無償化ということで、そこは理念的に差をつけているということでございまして、しからば、では、この先、最終的にどうなっていくのかというお問合せだ、こういうふうに思います。
やはりこれはまだ今から議論していくことだとは思いますけれども、実際に、世の中に、大学に進むことを選択されずに、働いて税金を納められて、そして大きな成功を遂げていらっしゃる方もたくさんおられるわけでございますから、そういうことを考えると、高等教育が直ちに無条件に無償化ということは、なかなか今の段階でそこまでのものを示すというのは難しい状況なのかなというふうに思っておりますが、そういう状況の中で、まずはこの経済政策パッケージの枠組みを、詳細、制度をしっかりやって、これだけの税金を投入するわけですから、納税者の理解をしっかりと得られるような仕組みをつくっていくということが大事なことであるというふうに思っております。○中川分科員 ちょっと整理をしたいと思うんですが、新しい経済政策パッケージの方でうたっているのは、特に高等教育については、所得が低い家庭の子供たちに限って無償化を実現するという形で入っているんですよね。さっき言われた幼児教育については無償化をしていくということ、これは片方あるんですよ。
そこで、私が最初言ったように、これは理念の問題でありまして、文科省のサイドでいけば、教育というのを国民に提供していくのに、理念として、国が教育というのは背負っていくんだ、だから国家でその環境づくりをしていくという理念に立てば、例えばドイツがそうであったように、奨学金じゃなくて授業料の方を無償化をしてその環境をつくる。だから、志のある人たちは授業料なしで、ちょうど義務教育がそうであるように、これは国家の責任でやっているように、高等教育まで、あるいは幼児教育も含めて、授業料という分野で無償化をしていくという目標を私は文科省としてはつくるべきだと。理念なんですよ、福祉政策じゃないんです、所得は関係ないんですよ。所得は関係なくて、理念として、教育理念として国家がそこは責任を持っていくということで考えるとすれば、授業料の方、あるいは保育料の方という形になるわけです。
ところが、もう一つ、それだけで恐らく高等教育というのは充足されない。所得の低い人たちにとっては、例えば東京で生活するということになると、それだけの生活費が要りますね。これは学費じゃなくて生活費なんですよ。ある意味、これを考えていくとすれば、所得ということを入れてもいいだろうし、そうじゃなくて、両方入れちゃうと、このままで行くと、所得の低い人たちは授業料も減免されて、奨学金もそれを見てかぶさるわけです。大学に行かない人たちは、それじゃどうなんだと。生活費まで見て、私たち大学に行かないという意思を持っている人たちは、そういう税金の使い方をしていいのかという形になるでしょう。だから奨学金は貸与なんですよ。これは生活費だから貸与で返していきますよ。
実は、私がそのとき自分の頭で整理をしたのは、ちょうどオーストラリアやイギリスなんかの国々でやっているように、卒業した後、ある程度の所得が形成されるまで待って、出世払いの奨学金制度というのをその中に入れ込んで、大学に行くということになるとすれば、それはもう親から独立をして自分がかりで、親がかりじゃなくて自分がかりで高等教育が受けられるような設計をそこでしてみたらどうかということで、両方を入れていく。その二つの理念をあわせた形の設計をしたらどうかというのが私の提案だったんですが、やりませんか、これを。こういう整理が私は必要だと思うんだけれども。林国務大臣 実は、自民党の方でもそういう検討をされておられるということを私ちょっと聞いておりますが。
今委員がおっしゃったように、オーストラリア、たしかHECSと呼んでいたと思いますが、所得層にかかわらず、高等教育は特に自分に対する投資である、その投資を社会に出ていって職業で所得を得ることによって回収をする、それでもって返していく、こういう仕組みであろうか、こういうふうに認識をしております。
私はこれが非常におもしろいと思うのは、日本ではどうしても親が大学の費用を見る、こういう意識といいましょうかそういうものがあるわけですが、このHECSということになりますと、自分でその負担をする。いつ負担するかは、後で負担するということになるわけでございますが、その意識の転換というのが非常におもしろいところであろうというふうに思っております。自分自身、留学したときも、周りの学生を見ましても、ほとんど自分で何とかファイナンスをするということが原則であるということで、それだからかどうかわかりませんが、やはり自分で金を出しているだけに、本当に熱心に勉強しておるということも間近に見てまいりました。
したがって、このことは実は政策パッケージの中にも、二〇二〇年四月からこのパッケージをやります、先ほど御説明したことがございますが、これに加えて、中間所得層のアクセスの機会均等について検討は継続してやっていくということになって、オンゴーイングでこのことは勉強していこうということになっておりますので、我々の方も、では、日本でこういうことをもしやるということになった場合には一体どういうことを考えていかなければならないのかということを、勉強を始めておるところでございます。○中川分科員 ぜひ進めていただきたいんですが、そのときに、もう一回確認をするんですけれども、理念なんですよね。金がないから授業料の無償化についても所得制限を入れたいという気持ちはわかるんだけれども、本来、これはやはり文科省としての理念で突き進んでいくとすれば、所得制限なしで大学まで国の責任でやりますということをやはり貫くべきだと思うんです。
奨学金については、財源ということを考えたら、これは給付型の奨学金をやったら財源はとてつもなく毎年毎年要ってくるんだけれども、出世払いでも、少し猶予を与えて、そして金を回したら、ここで財源は浮くんですよ、逆に。さっきの話で、親がかりじゃなくて本人がかりですよという設計の中で。これも理念なんだと思うんです。
そうした整理をまず文科省としてはやるということでないと、官邸というか、向こうに引っ張り込まれて理念がごしゃごしゃになっちゃって、これは一体福祉政策なのか、それとも教育政策なのか、あるいは国家として、それこそ憲法にかかわってきますけれども、どこまで、日本の最低保障をやる、教育の保障をやっていこうとするのか、そういうところはやはり文科省が頑張らないと。先にこっちが出さないといけないというふうに思っていまして、ぜひ頑張っていただきたいなと。
それからもう一つは、この話をリカレントと組み合わすことができると思うんですよ。授業料を無償化して、そうした出世払いで、所得に応じた、これは出世払いということは所得に応じた形で返してもらいますよということだと思うんですが、これが組み込まれていたら、リカレントのチャンスはどっとふえる。考え込まなくていいんですよ。借金してでも行こうかという話になるということですよね。そんなことをちょっとしっかり指摘をさせていただきましたが、やってください。