今度の改正で不動産利用消費税還付スキームが完全に閉ざされました。
*****************(以下は18年2月19日)************
少し前の話ですが、平成25年03月06日参議院本会議で、生活の党の森ゆう子議員が次のような質問をしました。
消費税には幾つかの欠陥があります。価格転嫁しにくい内税にしたことはもちろん、何よりも大きいのは、正社員の給与には仕入れ税額控除を認めず、派遣社員の派遣料には仕入れ税額控除を認めたことです。これでは、同じ売上げ、同じ人件費の企業でも、正社員を減らして非正規の雇用を増やした企業は国に納める消費税が少なくて済みます。昨年三月二日の衆議院予算委員会公聴会で、当時、政府税調メンバーの三木義一青山学院大学教授も指摘されていたとおり、小泉内閣で人材派遣を製造業まで拡大したことと相まって、消費税が派遣労働を促進してきた面があります。そのことが、今日の格差社会の根底にあります。非正規で所得が少ない若者は結婚できない。だから、少子化に歯止めが掛からない。悪循環に陥っています。この消費税の欠陥を放置したまま税率を上げることになれば、社会のひずみは更に拡大します。安倍総理、税率引上げの前に、立ち止まって、消費税の欠陥是正に取り組まれるおつもりはありませんか。
これに対して安倍首相がこう答えました。
消費税に関する事項についてお尋ねがありました。消費税の転嫁対策については、事業者の実態を十分に把握し、与党における御議論を踏まえつつ、価格表示の在り方を含め、実効性のある対策の具体化に取り組んでまいります。派遣労働者の受入れ企業は、派遣料に係る消費税額を控除できることになりますが、一方で、人材派遣会社に対しては派遣料に上乗せして消費税を支払うことになるため、直接雇用の場合と比べて損得は生じないことになります。したがって、消費税が非正規雇用を拡大してきたということにはならないと考えております。
この説明は、正規雇用者を非正規にして外注にしても、損得は生じないと答えています。つまり、それまで雇用していた人を外注にすると、消費税分をプラスしなければならないから、仕入れ税額として控除できても同じだ、という説明です。伝統的に財務省が使ってきた説明のようですが、実態とは異なる、制度の建前のみを説明したもので、答弁としてふさわしいのかは疑問です。
実際はどうなるか。年収500万円の雇用者を外注にします。外注にしても、彼の収入は従来通り、500万円にできます。だって、彼は免税業者だからです。消費税納税義務を負わないので、従来通りの500万円にされてしまいます。そのうえで、会社はどうなるか。免税業者からの仕入れでも、日本の帳簿方式の場合は、仕入れ税額控除の対象になります。このことを国税庁が次のように解説しています。
No.6455 免税事業者や消費者から仕入れたとき[平成29年4月1日現在法令等]
消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上げ等に係る消費税額からその課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)を控除して計算します。この場合の課税仕入れとは、商品などの棚卸資産の仕入れのほか、機械や建物等の事業用資産の購入又は賃借、原材料や事務用品の購入、運送等のサ-ビスの購入など、事業のための購入などをいいます。したがって、免税事業者から仕入れた場合や事業者ではない消費者から仕入れた場合も、仕入税額控除の対象となります。この免税事業者や消費者から仕入れた場合でも、その支払った対価の額は消費税及び地方消費税込みの金額とされますので、その対価の額の108分の6.3(注)相当金額は消費税額として仕入税額控除を行うことができます。例えば、免税事業者である下請業者に外注費100万円を支払ったとします。この100万円の支払の中には、その108分の6.3(注)に相当する58,333円の消費税額が含まれているものとして、仕入税額控除を行うことになります。このことは、事業用の建物や器具などを事業者でない人から購入したり賃借する場合も同じです。
つまり、首相の説明は課税業者と取引をした場合の建前の説明で、正規雇用を非正規雇用としての外注にした場合に通常である「免税」業者になることを無視した議論です。首相の言う通りなら、正規雇用者を外注化してきた中小企業の説明ができません。国会で議論するなら、こうしたこともきちんと理解したうえで議論してほしいものですね。