仮想通貨で1億円以上利益を上げた。宝くじで1億円が当たった。1億円の万馬券を当てた。もしこの夢が叶ったら?
いずれも1億円稼げたのですが、税金の計算方法がそれぞれ異なるため、手取りも税額も異なります。お金を増やすときに大切な要素に「税金」があるのです。
同じ利益の額でも、税金が異なるだけで次に投資する資金の額も変わります。今回は、1億円儲かったら手取りはいくらになるのか、税金はいくらになるかを検証します(※税額の計算は利益×税率として簡略化しています。実際は、「納税額=利益×税率―控除額」となります)。
仮想通貨の税金は意外と甘くない
ビットコインなど仮想通貨や株式投資などで億円以上の利益を出した人のことを、「億り人」といいます。仮想通貨に関しては、税金のことを考えずに喜んでいた人が多かったようですが、無税で済ませるほど日本の国税庁は甘くありません。さっそく、所得税のなかでも節税しづらい「雑所得」という分類に当てはめられました。
当初、仮想通貨に投資していた人は、金融商品のような感覚で仮想通貨を購入していたでしょう。たしかに、仮想通貨の値動きを見ていると、株式相場のようでもあります。金融商品であれば所得税と住民税を合わせて20%の課税、かつ給与などとは別に課税する分離課税なのでは? そう考えた人も多かったでしょう。
所得税は、1年間の収入をまとめて税率をかける総合課税と、利子や株式投資の利益など総合課税とは別に、一律の税率で税額を計算する分離課税の2種類の課税方法があります。分離課税は収入にかかわらず一律のため、億り人など一時的にでも富裕層になった場合は減税に相当する課税の方法です。
しかし実際は、給与などと合算し、損益通算の使えない所得(雑所得)と認定されました。これにより、億り人の多くは慌てたに違いありません。
なにせ、金融商品としての利益であれば、1億円の利益に対し、一律20%の税率が適用となり、2000万円納税すれば済みます。
しかし、雑所得となれば話は別です。1億円の利益に対し、多少の経費は認められるとしても、所得税率45%が課せられ、4500万円の納税となります。当初想定の2000万円から倍増しています。
恐ろしいのは仮想通貨ではなく税金
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損益通算とは、所得の黒字と所得の赤字を相殺させる方法です。年収が500万円の場合、400万円の赤字所得があればその年の所得は500万円―400万円=100万円となり、税率を下げられる場合があります。
仮想通貨の売却益を再投資していた人は、納税のために一旦売却を選んだ人もいるでしょう。 仮想通貨で儲けて家などを購入した場合は、換金が難しいですから、税金を払うのに苦労したでしょう。家を売った人もいたかもしれません。最悪なのは、よりリスクの高い投資を選択し、資金が減ってしまった場合です。税金はなんとしてでも支払わねばなりませんから、財産を投げ売りして納税した人もいるでしょう。
さらに恐ろしいことに、翌年には住民税の納税が待っています。利益が1億円とした場合、住民税の税率は10%ですから、1000万円の課税となります。手元にお金が無いのに1000万円もどう支払うのか? 住民税は普通徴収といって毎月払いが可能ですから、分割して支払うことになります。恐ろしいのは仮想通貨ではなく税金です。甘く見るととんでもないことになるわけです。
【仮想通貨:利益1億円、税額5500万円、手取り4500万円】
宝くじが当たったら税金はどうなる?
宝くじは非課税です。いくらプラスになっても税金を納める必要はありません。1億円でも何億円であっても税金はかからないのです。
ただし、宝くじに当選すると、情報がどこからともなく漏れ伝わり、寄付の依頼が増えたり、知らない親戚が増えるという怪奇現象がおこるようです。
そして恐ろしいのは、身を持ち崩してしまう人がいること。何気なく買った宝くじが当たり、宝くじの行列に並んだ程度以外の苦労もなく、突然大金を手にした場合、金銭感覚が狂ってしまいお金を使い果たしてしまうことがあるようです。大金を手にして身を持ち崩す例は、日本に限らず世界共通。身の丈に合わない資金を意図せず手に入れることはリスクを伴うことなのかもしれません。
競馬を当てたら税金はどうなる?
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日本における公営ギャンブルの中で知名度の高い競馬。趣味が「馬」といえば、乗馬ではなく競馬を指します。競馬の特徴は、自分で当たると信じられる組み合わせを選べること。値上がりするか不透明は仮想通貨や、後の抽選で当たりが決まる宝くじと異なり、当たりを予想することが可能です。
競馬には払戻金には税金がかかるのですが、税金の計算は2つに分かれます。1つは趣味の範疇で馬券を購入し結果を的中させた場合です。この場合は、一時所得という所得税の計算に分類されます。もうひとつは事業として競馬に投資した場合で、雑所得に分類されます。
一時所得の計算は「所得税額=(収入―経費―50万円)×1/2×所得税率」です。収入は競馬の配当金、経費は馬券となります。所得税率は0~45%まで幅があります。収入の少ない人は税率が安く、収入の多い人は税率が高くなります。
雑所得の場合はどうなるでしょう。過去に自動購入ソフトを使って馬券を買っていたところ、払戻金を雑所得とし、ハズレ馬券を経費として認める判決が出ています。他にも、インターネットで馬券を購入していた人がハズレ馬券を経費として認められたという事例があります。
もし競馬で1億円の払戻金があった場合は?
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1億円の払戻金を受け取った場合どうなるでしょう。
■(1):一時所得の場合
(1億円―馬券購入費用―50万円)×1/2×所得税率となります。
馬券の購入費用が1万円であれば、一時所得は約5000万円、所得税率は45%として納税額は2250万円となります。さらに、翌年は住民税として税率10%、納税額500万円が課せられます。
【競馬①:利益1億円、税額2750万円、手取り7250万円】
■(2):雑所得の場合
(1億円―ハズレ馬券を含めた購入費用)×所得税率となります。
1万円しか馬券を買ったことがなければ、利益はほぼ1億円。所得税率45%で4500万円、住民税率10%で1000万円、合計5500万円の納税が課せられます。一方で、馬券の研究を通じてハズレ馬券の購入総額が(有り得ない高額ですが)1.5億円であった場合、利益ではなく5000万円の損失が発生していますから、所得税は0円、住民税も0円です。
【競馬②:利益▲5000万円、税額0円、手取り▲5000万円】
いかがでしょうか。儲かった! 当たった! と聞けば羨ましいものですが、納税は待ってくれません。喜んでお金を使い果たす前に、いつ、いくらの税金を支払う必要があるのか計算しておくべきでしょう。なお、利益が出て納税が確実な人は、税金の計算は税理士に委ねたほうが安心ですし、税務調査などの対応もありえますから安全です。
となりの芝生は青く見えますか? 実際は、日本で生活する限りはあまり美味しいことでは無いのかもしれませんね。
<TEXT/高橋成壽>