12日の国際青少年デーに合わせ、世界経済フォーラム(WEF)の創設者で会長のクラウス・シュワブ氏が、朝日新聞など各国の主要メディアに寄稿した。抄訳は次の通り。
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今日の若者たちは、危機に見舞われた世界の中で成人になっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、世界中で人々の生活や生計に壊滅的な打撃をもたらした。だが、それ以前から社会・経済システムは地球の環境を危機にさらし、多くの人々の健康で幸せで充実した生活を送るための道筋を脅かしてきた。
第2次世界大戦後、世界の発展と民主主義を可能にした繁栄は、今日の不平等、社会的不和、気候変動も生みだし、さらには世代間の貧富の差や若者の債務負担を拡大した。2021年は、世代間が公平であることを基準とし、すべての人々に配慮した社会、経済、国際社会を設計するために、長期的な視点で考え、行動し始める時だ。そして、若者たちこそが、この変革を導くのに最適なのだ。
彼らが早急に国際社会に求めているのは、新型コロナのワクチンの公平性を確保し、将来の健康危機を防ぐことだ。また、グローバルな富裕税を導入することで、より強靱(きょうじん)なセーフティーネットの構築に資金を供給し、富の不平等の急速な拡大に対処することだ。若者が政策立案者になることを支援するプログラムへの投資拡大も求めている。
若者たちは、地球温暖化対策の一環として石炭・石油・ガスの探査、開発、資金調達の停止を要求している。また、よりクリーンなエネルギー源への移行に消極的な取締役がいる場合は交代させるよう企業に求めている。
この世代の野心と期待に応えるには透明性、説明責任、信頼、そしてステークホルダー(利害関係者)のための資本主義に焦点を当てることが重要だ。