泉佐野市に対する総務省のいじめ。これをどう評価すべきか。
****************(以下は19年12月22日)*************
ふるさと納税の利用者は高額所得者のようです。現行制度からすればそうでしょうね~。
〔学者が斬る・視点争点〕応益原則逸脱のふるさと納税=島村玲雄
2019.12.24 エコノミスト 第97巻 第50号 通巻4631号 70~71頁
◇税収減穴埋め原資には国税もふるさと納税による寄付総額は増加の一途をたどるが、ゆがんだ政策となってはいないだろうか。総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」 によれば、2018年度のふるさと納税額は3481億円に上り、ふるさと納税の利用者は約300万人まで増加している。寄付金受け入れ額最多は18年度497億円の大阪府泉佐野市であったが、19年6月より対象外とされ、国を相手取って提訴する事態となっている。
ふるさと納税は「税」と銘打ってはいるが、基本的には、従来から認められている、公益法人や非営利法人などへの個人の寄付金を所得税から控除する寄付金税制の範囲を、自治体まで拡大し住民税からも控除するものだ。その意味では、非営利法人に対する寄付に寄付控除が適用される一方で、自然災害に見舞われた自治体に対する寄付金に寄付控除が適用されないことに対しては一定の整合性が求められるだろう。
これが「故郷寄付金控除」として提案され、現在のふるさと納税制度に至る根拠となっている。若者人口は就職などを機に都市部に転出し、彼らの教育および福祉にかかるコストを負担するのみの地方自治体もある。流出先の都市部自治体に移り住んだ住民は、住民税を出身地の自治体へ分割して納付することはできない。ふるさと納税はこのような問題意識から考え出された「政治的妥協の産物」だ。
しかしながら、現実には「実質2000円の自己負担での返礼品」を見込んだ利用者を各自治体がいかに確保するかといった返礼品競争となっている。地元の特産品や観光誘致の返礼品は地域経済の活性化につながるという副次的な効果があるものの、返礼率のより高い自治体に寄付金が多く集中する傾向にある。受け入れ金額最多の泉佐野市は、返礼品として、ネット通販大手「アマゾン」のギフト券を寄付額の最大数十%分上乗せするキャンペーンで話題になった。これでは地場産業への租税支出としての効果も期待できないうえに、本来自治体に納付される税収が外資の大手企業の利益となってしまう。ただし、かつて泉佐野市は目玉となる特産品がなく流出する側の自治体であり、こうした行動に出る自治体も想定されうる制度であったのも事実だ。
これに対し、総務省は通達によって全国の自治体に高い返礼率の見直しを要請し、「良識ある対応」を求め、泉佐野市など過剰と判断した自治体を制度対象外とするという対応を取った。◇返礼品業者の利にも
ふるさと納税によって控除額分が多額に「流出」した自治体に対しては、控除超過額の75%は地方交付税交付金によって補填(ほてん)される仕組みになっている。交付税は、所得税・法人税、酒税、消費税の一定割合と、地方法人税の全額を原資としている。つまり、ふるさと納税による税収減となった自治体への補填は、相当量の国税が原資となっているのである。自治体の財布に入ったお金に色はつかないが、実態としては、税財源によって返礼品取扱業者を潤しているのと同義だ。業者の選定にも限界があり委託業者に一任するケースも多く、業者が当該自治体の外に本社を置く場合には寄付の恩恵も流出し、制度の趣旨に反する。
15兆円ある交付税総額に比べれば、ふるさと納税による税収減の影響は大きいものではない。しかし、東京都区部などは税収があり交付税はもらっていない不交付団体だ。こうした不交付団体では、流出が多額になっても交付税による補填は受けられないため、純然たる減収となり、彼らにとっては不合理な制度であり、小規模自治体にとっては死活問題となる。
神奈川や埼玉などの都市部は大都市ではあるが財政状況は必ずしも潤沢であるとは言えず、待機児童対策など大都市ゆえに発生する財政需要に応える必要がある。地方税原則から考えれば、受益する公共サービスに対する相応の租税負担をするという応益原則や負担分任原則から大きく逸脱する制度だ。◇住民税控除縮小も一手
さらにふるさと納税は高額所得者に対し「実質的な節税制度」として機能している。この制度による税額控除が受けられる限度額は、年収が多いほど高くなる。たとえば、共働き夫婦で中学生以下の子供がいるケースを見てみよう。本人の年収が300万円の場合、年間控除額は2万8000円だ。しかし、年収500万円ならば6万1000円、1000万円ならば17万6000円、2500万円ならば84万9000円にもなる。このうちの何割かは返礼品として見返りがあるので、自己負担は一律2000円で高額所得者ほどその恩恵は大きい。実際に国税庁『税務統計から見た申告所得税の実態』によると、寄付を行っている層は、年収400万~5000万円程度の中間所得者から高額所得者層の利用者が多く、寄付金額に占める割合で見てみると、年収1500万~1億円程度の利用者が多くを占めることが指摘されている(橋本恭之「ふるさと納税制度と国・地方の財政」『関西大学経済論集』2019年)。
このいびつな制度の下、「税収奪い合いゲーム」での生き残りに地方自治体はマンパワーを割かざるを得なくなっている。一つの代案として返礼品から自治体の政策や取り組みに出資する「ガバメントクラウドファンディング」に移行しつつ、住民税からの控除は寄付金控除同様に自治体の条例で制限し、所得税からの税額控除にとどめる。これによって住民税の流出がなくなり、ふるさとへの応援と多少の返礼の制度の枠を維持しつつ、寄付金控除での運用が可能となる。税の経済である財政の機能は、所得再分配・経済安定化・資源最適配分であり、支え合いの経済だ。制度の本懐に立ち返ることが必要だ。
(島村玲雄・熊本大学大学院人文社会科学研究部専任講師)
………………………………………………………………………………………………………
■人物略歴
◇しまむら・れお
1986年横浜市生まれ。2009年慶応義塾大学商学部卒業、15年慶応義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。修士(経済学)。慶応義塾大学経済学部PDを経て、17年より現職。専門は財政学・地方財政論(オランダ)。
***************(以下は11月21日)**************
東京区部の対抗策はCFだそうだ。なかなか面白い試み。
***************(以下は10月4日)************
2018年度のふるさと納税制の実態。3割が赤字だとのこと。
**************(以下は9月3日)************
****************(8月24日)****************
ふるさと納税の新制度も根本が変わっていないので問題が多いように思います。
*****************(以下は6月26日)**************
***************(以下は6月11日)******************
******************(以下は6月1日)***************
今日から新制度。こんな事態を招いたのは誰か?
******************(以下は5月29日)*************
****************(以下は5月23日)***********
翻弄された自治体の長からの問題指摘。まあ、その通りですな~。
******************(以下は5月9日)****************
*******************(以下は4月12日)***************
********************(以下は3月30日)**************************
***************(以下は3月29日)**************************
遂に事前審査制に。これで制度が良くなるとは思えないが・・
***************(以下は3月23日)**************************
これは総務省のだまし討ちですな。どっちもどっちだ。
**************(以下は2月28日)**************************
だいぶ減ったようです。ふるさと納税は愚民化政策だったかもしれませんな~。
****************(以下は2月27日)************
****************(以下は2月20日)**************
****************(以下は2月15日)***********
**************(以下は19年2月9日)***********
泉佐野市と大臣との論戦。どっちもどっちで、ばかばかしくなる。
************(以下は12月30日**************
現状についての報道です。勝ち組は少数のようですね。
***************(以下は12月3日)************
子供のための食事支援制度がふるさと納税でさらに広がる!これこそ、本当のふるさと納税です!
***************(以下は11月22日)**************************
改めて、廃止論の論拠が示されています。確かに。
****************(以下は10月12日)**************
地方自治体のすべてがうはウハウハというわけではないようです。地方も大変。
*************(以下は10月10日)***************
******************(以下は10月3日)******************
***********************(以下は8月6日)***************
****************(以下は7月28日)**********
ふるさと納税による減収額、全国で2000億円。都市からの流失?
**************(以下は7月17日)******************
国の改善要求に対応できない自治体名公表。どちらが正しいのかね~。
*******************(以下は7月10日)************
*****************(以下は7月7日)***************
ふるさと納税の利用は5年連続過去最高だとか。制度本来の狙いは今どこに。
***************(以下は6月25日)*****************
******************(以下は6月10日)*************
いよいよ東京都も参戦。これから都市部の逆襲が始まるかも。
****************(以下は5月12日)***************
渋谷区が控除を忘れたそうです。地方税の課税方式は賦課課税方式で、間違えたのは渋谷区ですから、戻すことになります。国税の申告納税だと、申告すべきは納税者ですから、申告で間違えた納税者が悪いのですから、更正の請求などをしなければ戻りません。どちらが良いか、悩んじゃいますな~。
************(以下は4月25日)*************
首都圏自治体がふるさと納税による減収をどう考えているか。
*************(以下は3月13日)*****************
今度は『お墓』だそうです。いろいろ考えますな~。
***************(以下は18年2月11日)****************
この試みの続報です。こういう市民の気持ちを税に生かしたいですな~。
*****************(以下は17年10月26日)************
払税者がその税金の支出先を特定できることが本来のメリットであったふるさと納税は、いつの間にかお土産合戦に堕落してしまった。そんな中で、ある自治体の試みが注目されています。
お土産目当てではなく、貧しい子供たちへの給付に力点が置かれています。
*****************(以下は15年8月)***************
9月13日のシンポに向けての資料の一つとして、ふるさと納税についての提言です。