税大ジャーナル 2017年6月の「IFA 第 70 回年次総会(マドリッド大会)の模様」というレポートはとてもすばらしい。こういうレポートをまとめるのは、本当に大変だったろうと人ごとながら思いました。

 違憲性の判断に係る裁判所の権限について、議長はパネルに対して「裁判所は、合憲性の欠如若しくは人権条約に反することを理由として、税法を適用しない、又は無効とすることができるか。」という質問を行った。参加4国の回答は以下のとおりだそうです。

⑴ オーストラリアの回答
合憲性の欠如を理由として、税法を無効とすることはできるが、人権に反するという理由では無効にできない。オーストラリア憲法には、人権保障規定はなく、オーストラリアの税法には納税者の基本的権利や自由の保護を定めたものは存在しない。納税者に本来備わる権利はコモンロー(判例法)上に含まれると考えられている。その権利の一つは、税務当局の行為に対し裁判所に訴えることができる権利である。オーストラリア憲法は、国会に課税に関する法を制定する権利を付与している。そのため、国会の制定した法が課税に関する法であるかという観点で違憲性を問うことはできる。課税に関する法と言うには、①その税法が恣
意 的 な 課 税 を 許 す も の で な い ( nonarbitrary)こと、②課税庁の処分等に対して裁 判 所 に 訴 え る こ と が で き る こ と(contestability)、③納税義務を課していること(liability to tax)が必要となる。

⑵ ドイツの回答

ドイツの憲法裁判所は(セミナー当日に)65 周年を迎えた。憲法裁判所では、過去 20万件もの違憲審査を行っており、そのうち4,000 件から 5,000 件が税法に関するものである。このうち、違憲と判断されたものはわずか 2%程度にとどまるが、ドイツの憲法裁判所では税に関する多数の案件を取り扱っている。

⑶ 南アフリカの回答

南アフリカ憲法に定められた平等原則に反するとして、裁判所は税法を違憲とすることが可能である。分かりやすい例では、女性が既婚か未婚かで異なる課税をしたりすることは平等原則に反すると考えられている。また、南アフリカの憲法には裁判所に訴える権利(access to court)が定められている。ただし、南アフリカにおける憲法の歴史はまだ 20年と浅いため、具体的な判断は裁判例を待つことになる。

⑷ 欧州人権裁判所の回答

議長は、欧州人権裁判所のパネルに対しては「差別的な取扱いを受けたり、財産権を侵害されたりした場合、欧州人権裁判所に税の案件を提訴することができるか。」という質問を行った。

欧州人権裁判所は、加盟国 47 か国をカバーしているが、税制に関する財産権の解釈については、基本的に加盟国に広い評価の余地(margin of appreciation)を与えている。また、欧州人権条約上の財産権の侵害があると認定するためには、問題の税法に合理的な根拠(reasonable foundation)が欠けている必要があるが、通常税制は合理的な根拠があると考えられている。そのため、税に関する案件を扱うかという問いについては、取り扱わないわけではないが、財産権の侵害と認定するには厳しい基準を満たす必要がある。