• ついに課税しましたね。朝日等が報道しています。 昨晩あたりからマスコミが騒がしかったのです。 私も昔京都新聞に書き、このHPにも論点を掲載しています。ご覧ください。 今日の日経には『上納金は暴力団組員が組織の名称を使い、「縄張り」にしている地域の飲食店や風俗店から「みかじめ料」などとして徴収した金銭。組員が毎月納め、組織運営を支える資金基盤とされる。捜査関係者によると、野村容疑者は上納金の一部を自身や知人の生活費にも充てていた』と記載されており、個人の所得として消費されていることをつかんだようですね。逆に、あくまでも会の運営費だけに使われていることが反証されると、個人所得に当たる約2億2700万円を隠して所得税約8800万円を免れた所得税法違反(脱税)の主張が危うくなるのですが、まずそういうことはないでしょうね。
  • 今日の毎日の続報を読むと、会長は明確な個人所得については申告していたようです。そうすると会長の個人的支出はそこから出していたはず。上納金はあくまで「工藤会」というサークル活動のための預かり金で、会のためにしか使っていなかった、という反論がなされるでしょうね。そうすると会員のお金を預かって、サークル活動のために使っただけですので、個人所得税の脱税というのは難しくなります。ところで、この工藤会というのは法人ではありませんよね。それでは人格なき社団といえるものなのか。もうしそうなら、この上納金に関わる活動を収益事業として課税できるか、という問題もでてきます。ただ、社団といえるためには、会が「民主的に運営」されていなければならないので、まず無理でしょうね~。
  • その後も、暴力団と課税の問題について、いろいろ質問が寄せられています。西日本新聞の下記記事は課税の難しさを上手く表現しています。

    上納金の仕組みには暴力団組織の本質が宿るといえる。暴力を背景とした組織の看板で活動して資金を得た組員らが毎月定額を組織に納める。そこには飲食店や建設業者などから取り立てたみかじめ料をはじめ、各種犯罪の収益も含まれる-と警察はみている。こうしたカネの流れを絶つことが暴力団対策の決め手になる。そう指摘されてきた。だが、実際は一筋縄ではいかない。カネのやりとりは現金が中心で、領収書や帳簿が残ることもない。実態を正確に把握するのが困難だからだ。

    そうですね。現金商売ですね。証拠をつかみにくいし、通常の税務調査も怖くてできませんよね。組長がみかじめ料を組員に支給した場合、これは個人的贈与か、それとも給与か、利益の分け前か、によって、組員の課税関係も分けれますね。組員の生活実態は、平成5年時のものですが、警察白書の記載があります。なかなか生活は厳しいようです。なお、みかじめ料を支払った事業主は、これを経費にできないことは判例上確立しています。このような、考えれば考えるほど問題点が出てきますね。暴力団というものの存在を前提にした課税制度がないからですが、そりゃそうですよね~。

  •  京都新聞が社説で今回の意義をたたえ、他の暴力団組織にも広げていくことを求めています。暴力団組織の中には、法人化しているところもありますね。備品リース業などを展開し、みかじめ料ではなく、リース料金をいただくのも一つの手かもしれません。実際には、不動産業などが多いようです。法人が法人として脱税をすれば、法人の代表等を脱税で逮捕できますね。逮捕された事例はあります。2010年1月23日の読売の報道では次のように報道されたそうです。
    ビル転売で8億円脱税、暴力団組長ら逮捕(読売新聞)
     東京・銀座のビル転売を巡り、東京都港区の不動産会社「湊開発」が法人所得約26億7000万円を隠し、法人税約8億円を脱税した疑いが強まったとして、東京地検特捜部は20日、同社を実質経営する指定暴力団稲川会系組長中村富夫こと張富夫(60)、同社代表取締役坂元秀之(53)の両容疑者を法人税法違反容疑で逮捕、東京国税局と共に関係先を捜索した。

    法人税法では「法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(159条)とされていますし、法人にも罰金刑を科します(163条)

  •  暴力団の脱税方法としては、マネーロンダリングが、国際的に問題となっています。2003年から8年にかけていろいろと騒がれた五菱会事件が思い出されます。詳しくは志賀櫻氏の『タック・ヘイブン』(岩波新書)一二九頁以下、及びインターネットでは『裏』に詳しい人が書かれているようなこのブログを参照して下さい。この暴力団のマネロンに関連して、韓国の国民銀行東京支店が業務停止を受けたのが昨年でした。日経のこの記事がそのことを意味していたようです。日韓問題にもつながりかねないので、マスコミの報道は抑制気味だったので、私も気づきませんでした。しかし、こういう不正に手を貸す企業は社会的に批判し、関連企業(某有名メーカ関係者がこの問題に関係していたとの指摘もありますね)の不買運動をするぐらいの国民の監視が必要ですな。
  • 先週産経新聞の大阪版夕刊に暴力団課税の問題点として私の次のコメントが掲載されました。
    三木義一青山学院大教授(税法)の話「サークル活動など、任意団体が運営経費として集めた金は課税されない。暴力団の上納金も同じ理屈で、これまで非課税となっていた。ただし、上納金の私的流用が確認できた場合には個人の所得として課税できる。今回は資金の流れを十分に調査できたということだろう。今回の立件で、暴力団側も警戒を強めることが予想され、今後も摘発に有効に機能するかどうかは未知数だ」

  私の表現は、少し慎重に述べたせいか、暴力団を課税で追い詰めるべきことを要請している日弁連民暴対策部の方から反論がありました。上納金をサークル活動の運営費と同じという説明に対する反論として、曰く。

「しかしながら、そのためには集めた上納金が厳密に運営費として支出されていることの証明が必要であり、今回の工藤会のように、自由に個人的支出に充てられるような実態がある以上、そのような反論は成り立たないのではないでしょうか」。もし、運営費の議論が正しいなら、工藤会の組長は、横領又は背任になると思いますが、誰も、そんなことは考えていないと思います。上納金の使途及びシステム等についての実態を確認したうえでの議論が不可欠なように思います。

  なるほど。確かに一理ありますね。ただ、このような論理を暴力団に対してのみ使うのか、それともグループ活動一般に使うのか、検討が必要になりそうな気がします。もし、後者だと、グループ活動の会費を集めている人は、当該会費を収入に入れて、運営費に充てたものに限って控除し、差額を個人所得として申告することを求めなければならなくなります。もし、暴力団に対してのみだとすると、一定の要件を満たしたグループについては、個人の収入とみなす規定を設けて課税すべきですね。後者の方が現実的かな。ですから、暴対法などで課税についての特別規定を設けるべきでしょうね。