亡くなった親が、税務申告下上で蓄積した財産以外に、税務申告もせずに秘匿してためていた財産もあったとしよう。

 この場合はどうしたらいいのだろう。親が秘匿してきた財産も申告しなければならないのだろうか。税法的には当然全部です。下記のように若干量刑で配慮してもらえるだけです。

告人の実父は二四億円余相当の公表財産のほか、二〇億円近くの割引債券、社債、株式等の隠し財産を保有したまま、平成三年五月一七日に死去したが、相続人らの中では被告人だけがこの隠し財産の存在を知っていて、自らこれを管理していた。被告人は、実父がどのような事情によってこれほど巨額の隠し財産を備蓄したのかは分からなかったが、これを公表することは実父の名誉を損なうであろうという気持ちもあって、その存在を秘したまま、共同相続人四名との間で公表遺産のみについての遺産分割協議書を作成し、これに基づき税理士を通じて、虚偽過少の本件相続税申告に及んだものである。なお、本件発覚後に改めてなされた遺産分割協議の結果等にかんがみると、被告人が本件犯行により得た不法の利益は六〇〇〇万円程度であると考えられる。
 本件のほ脱税額は二億九〇〇〇万円近くに達し(ほ脱率は約三四・六パーセント)、本件犯行は共同相続人の関係でも適正な相続税の課税を妨げるという結果をもたらしたものである。また、この種事犯については、一般予防の必要性も大きい。したがって、被告人の刑事責任には軽視を許されないものがあるといわなければならない。
 しかし、被告人が除外した遺産は,もともと実父が隠し財産としてひそかに備蓄していたものであり、犯行に至った経緯・動機には若干同情の余地があること、被告人は税務調査を受けるや隠し財産の存在を進んで明らかにし、以来一貫して真摯な反省の態度を示していること、相続した財産を処分して自己の相続税の納税を終えていること(共同相続人の相続税の納税もすべて完了している)、被告人には前科前歴がないことなど被告人のために酌むべき事情もある。
 以上のほか一切の事情を総合考慮し、被告人を主文の懲役刑及び罰金刑に処し、懲役刑の執行を猶予するものが相当と判断した。(東京地裁平成7年11月14日刑事第八部判決)

 こういう場合は、とりあえず全部申告しておき、万一、隠していた財産に対する他の課税が生じたときは、その分の相続税額を更正の請求で戻してもらうことになると思います。