相続税の脱税方法としてよく思いつくのは、架空の債務をでっち上げることですが、この架空債務を組み込んだ遺産分割協議をした場合、この遺産分割は無効なんだろうか。

公判で、弁護士は脱税額の認定の前提として、この遺産分割の無効を主張しましたが、大阪高裁平成九年三月一二日判決は次のように述べています。

八億円の債務についての分割の合意は、その目的たる債務が架空のものである以上、無効とならざるを得ないのであるが、これは、所論指摘のように、当然に本件遺産分割全体の無効をもたらすものではない。すなわち、法律行為の一部が目的の不能によって無効である場合に当該法律行為全体が当然に無効となるか否かは、その部分が全体との関係で法的に可分かどうかで決せられるべきところ、遺産分割は個別の財産を各相続人にそれぞれ取得させる合意であって、一部の財産に関する無効を他の財産の取得に影響させる物理的必然性はないこと、遺産の一部に瑕疵があったような場合には売主の瑕疵担保責任に準じた処理が予定されていること(民法九一一条)のほか、そもそも本来の遺産分割は積極財産たる遺産を相続人間で分割するものであり、消極財産たる債務の分割は、相続人間における負担部分の定めに過ぎないもの(当然には債務者に対抗できるものではない。)であって、右の本来的遺産分割に含まれないものであることを総合すると、本件遺産分割においても、八億円の債務についての合意は、他の積極財産の分割の合意とは可分なものと言うべく、八億円の債務に関する合意の無効が当然本件遺産分割全体の無効をもたらすものではない。

この事件では、架空債務をでっち上げた被告人は、当然懲役刑ですが、執行猶予もつけられています。う~ん、いいんでしょうかね。