平成に起きた脱税事件のうつ、印象に残るものをいくつか取り上げてみましょう。

 元裁判官の父から、国外におまえたちのために残してある、誰にもいってはいけない、といわれたらどうしましょう。税理士に相談すべきだろうか?巨額の国外資産を申告しなかった遺族のケースです。

横浜地裁平成23年7月28日第5刑事部判決では、量刑の部分で次のように述べています。

しかし,本件犯行の動機についてみると,長年弁護士(一時期は裁判官)をし,会社経営に携わったこともある人物で,被告人ら家族から絶大な尊敬と信頼を得ていた被相続人が,自らの余命が短いことを知って,上記資産を日本に持ち込むことなく海外で使うようにと被告人らに指示し,それまで上記資産の存在について具体的に知らされていなかった被告人らが,いずれもこれを被相続人の遺志として受け止め,これに従って,相続財産として申告しないこととしたものである。このように,被告人らは,強い影響力を有していた被相続人から,相続税のほ脱を唆すような指示を受けたため,本件犯行に及んだもので,自分らの発意により主体的に脱税工作を企図したものとはいえない。したがって,この点は,被告人らにとって酌むべき事情とみることができる。そして,被告人らは,国税局による調査が開始されると,これに全面的に協力し,本税,延滞税及び重加算税をすべて納付している。加えて,被告人らは,いずれも捜査,公判を通じて事実関係を素直に認め,反省の態度を示して,悔悟の日々を送っている。また,被告人らには,被告人Bと被告人Eの交通関係の各罰金前科を除いては前科がない上,被告人Aには高齢で健康状態も芳しくないという事情もある。
 そこで,これらの事情を総合考慮すると,それぞれ主文の懲役刑と罰金刑を併科した上,いずれも懲役刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。

 元裁判官や弁護士や脱税を指示するなんて、と怒ってはいけません。そんなもんだと思った方がいいと思います。税法については、裁判官の多くは全く知らないし、できたら払いたくない、という意識は庶民と同じだと私には思えます。